2026年4月、英国政府は、イングランドの学校給食基準「School Food Standards」を10年以上ぶりに大幅に見直す方針を発表しました。
今回の改革案で特に目を引くのが、
「学校で揚げ物を提供しない」
という方針です。
フィッシュ・アンド・チップスの国として知られる英国で、学校給食から揚げ物をなくそうというのですから、かなり思い切った改革です。
なぜ英国はここまで踏み込むのでしょうか?
背景にあるのが、深刻な子どもの肥満問題です。
英国政府によれば、現在、小学校を卒業する子どもの約3人に1人が「過体重または肥満」の状態にあります。
さらに、糖分の多い食生活による虫歯は、5~9歳の子どもが入院する主要な原因の一つになっています。
肥満は子どもの時だけの問題ではありません。
肥満の状態が続けば、将来的に
●2型糖尿病
●高血圧
●脂質異常症
●心筋梗塞・狭心症
●脳卒中
●脂肪肝
など、さまざまな生活習慣病につながる可能性があります。
つまり今回の学校給食改革は、単に「子どもを痩せさせよう」という政策ではありません。
将来の糖尿病や心血管疾患を減らし、長期的には医療費の増大を抑えるという公衆衛生政策として考える必要があります。
揚げ物だけではありません
英国政府が示した新しい基準案では、学校の朝食・昼食を含め、学校で提供される食事全体を見直します。
これまで学校では、揚げ物、衣を付けた食品などを週2回まで提供できる基準でした。
新しい案では、deep-fried foods(油で揚げた食品)を学校で提供しない方向へ変更します。
さらに、
脂肪・糖分・塩分の多い食品の提供回数を制限する
ソーセージなど加工肉の提供を制限する
ピザやソーセージロールなどを毎日のように提供しない
野菜、果物、全粒穀物を増やす
砂糖の多いデザートを減らし、多くの日で果物に置き換える
など、かなり包括的な内容となっています。
一方で、スパゲティ・ボロネーゼ、ブリトー、コテージパイ、ジャークチキンなど、子どもが楽しめる料理も例示されています。
つまり、単純に「おいしいものを禁止する」のではなく、
「健康的な選択を特別なものではなく、日常の標準にする」
という考え方です。
日本でも他人事ではありません
日本では英国ほど小児肥満率は高くありませんが、子どもの頃からの食習慣は、その後の健康に大きく影響します。
特に注意したいのが、
「太ってから治療する」のではなく、「太りにくい生活習慣を子どもの頃から身につける」
という考え方です。
診療をしていると、高血圧、糖尿病、脂質異常症などは、40~50歳になって突然始まった病気のように見えても、実際にはその何十年も前からの食生活や運動習慣が関係していることが少なくありません。
学校給食は、単に空腹を満たすためのものではありません。
毎日繰り返される食事を通じて、
「野菜を食べるのが普通」
「甘い飲み物を毎日飲まないのが普通」
「揚げ物は時々楽しむもの」
という感覚を子どものうちから身につけてもらうことも、大切な食育だと思います。
「揚げ物=悪」ではありません
もちろん、揚げ物を一度食べたから肥満になるわけではありません。
大切なのは、食事全体のバランスと頻度です。
好きなものを完全に禁止してしまうよりも、
「毎日食べるもの」と「時々楽しむもの」を分ける
という考え方のほうが、長く続けられる健康管理につながります。
英国政府が学校給食という子どもの日常生活そのものに介入しようとしている点は、日本にとっても非常に興味深い試みです。
子どもの肥満対策は、将来の糖尿病や心臓病を予防する「何十年先を見据えた予防医療」ともいえるでしょう。
今回の英国の取り組みが、実際に子どもの肥満率をどこまで改善できるのか。
今後の成果に注目したいと思います。

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