毎年流行するインフルエンザ。多くは軽症で済みますが、ごくまれに脳症などの重篤な合併症を起こし、命に関わることがあります。最近、国内外でインフルエンザに関連した小児の重症例や脳症・死亡の報告が増えており、専門家や公的機関も注意喚起をしています。
なぜ今、予防接種が重要なのか
死亡・重症化の多くは未接種の子どもに多い
2024–25シーズンの米国データでは、報告された小児のインフルエンザ死亡例のうち多くがワクチン未接種であったと報告されています(例:ある報告では約89%が完全接種ではなかった)。これは「ワクチンを打つことで重症化や死亡を減らせる」という重要な示唆です。
ワクチンは重症化(入院・集中治療・死亡)を減らすというエビデンスがある
複数の観察研究や系統的レビューで、季節性インフルエンザワクチンは小児の入院・ICU入室や生命にかかわる重症を中等度〜高程度に減らすことが示されています(最近の系統的レビューや大規模研究の結果)。ワクチンの効果は年ごとの型一致や年齢で多少変わりますが、重症化予防効果は一貫して報告されています。
専門学会・公的機関も早めの注意を呼びかけている
日本小児科学会なども、インフルエンザ流行に伴う小児の急性脳症の報告増加を踏まえて注意喚起を出しています。公的機関の勧奨に従い、接種や早期受診が重要です。
インフルエンザ脳症ってどんなもの?
インフルエンザ感染に続いて起きる急性の脳機能障害の総称で、意識障害、けいれん、異常行動、呼吸障害などを急速に引き起こすことがあります。小児で発生しやすく、進行が速い場合があります。発症は通常、発熱後比較的短期間で起こることが多いです。
親として今日できること
早めにワクチンを受けましょう
インフルエンザワクチンは毎年の接種が推奨されています(6か月以上の全員)。家族みんなで予防することで、感染チェーンを断ちやすくなります。
接種のタイミング
流行前(例:地域の流行動向に合わせて、可能なら流行期の直前までに)に受けるのが望ましいです。学校や自治体の集団接種、かかりつけ医院で相談してください。
ワクチン接種後も基本的な感染対策を継続
手洗い、マスク、換気、体調不良時の登校回避などを続けましょう。ワクチンは重症化を下げますが、感染自体を完全に防げるわけではありません。
症状が出たら早めに医療機関へ
特に以下の症状が出たら直ちに受診してください(脳症の初期兆候を含む):
・高熱に続いての意識のぼんやり・反応が鈍い
・けいれん(初めてのけいれんを含む)
・ぐったりして起きない、泣いても反応が薄い
・異常行動(意味不明な行動や急な混乱)
・呼吸困難や強い嘔吐で水分がとれない
これらはインフルエンザに限らず緊急性が高い症状です。早期に受診すると治療や支持療法で結果が大きく変わることがあります。
既往症がある子は特に注意
心疾患、呼吸器疾患、代謝疾患などの基礎疾患があるお子さんは重症化リスクが高く、ワクチン接種と早期受診がより重要です。
よくあるご質問(Q&A)
Q. 「ワクチンは本当に効きますか?」
A. 完全に感染を防ぐわけではありませんが、観察研究と系統的レビューで入院や重症(ICU、死亡)を減らす効果が示されています。ワクチンは重症化予防の有効な手段です。
Q. 「副反応が心配です」
A. 注射部位の痛みや軽い発熱などはありますが、重篤な副反応は非常に稀です。接種前にかかりつけ医と相談し、過去のアレルギー歴などを伝えてください。
最後に(保護者の方へ)
子どもの健康は何より大切です。インフルエンザは例年の病気に見えて、まれに脳症などの深刻な合併症を起こすことがあります。ワクチンは万能ではありませんが、子どもを重症から守るための有効な手段です。まだ接種をしていない場合は、かかりつけ医や自治体の情報を確認して、できるだけ早めの接種を検討してください。そして、発熱やいつもと違う様子があれば、迷わず医療機関に相談を。一緒に子どもを守りましょう。
参考文献
CDC — Reports of Encephalopathy Among Children with Influenza-Associated Mortality — United States, 2010–11 Through 2024–25 Influenza Seasons. (MMWR, 2025).
CDC — Influenza-Associated Pediatric Deaths; 2024–25 season summary.
Yegorov S. et al., Effectiveness of influenza vaccination to prevent severe influenza-related outcomes: systematic review (Clinical Microbiology and Infection / PubMed, 2025).
Clinical Microbiology and Infection
Olson SM. et al., Vaccine Effectiveness Against Life-Threatening Influenza in Children (Clinical Infectious Diseases, 2022).
OUP Academic
日本小児科学会 — インフルエンザ流行に関する注意喚起(2025年)
文責
はしもと内科 統括院長
医学博士・日本内科学会総合内科専門医・日本循環器学会専門医
川瀬幸典

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